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イーヴォ・ポゴレリッチコンサート

2/16、楽しみにしていたイーヴォ・ポゴレリッチのコンサートに行ってきました。

最近コロナウィルスが話題になっていて、会場にも手指消毒液がおかれ、お客さんもマスクをしている人が大勢います。

今回はピアノの後ろ側、向かって右側の2階席最前列です。手元は見えませんが、ポゴレリッチさんの演奏している表情が正面から見える位置です。

 

開場して間もなく、いつものように男性の声で会場での注意事項がアナウンスされました。と、それに続いて「英語でのアナウンスはポゴレリッチ氏自身がお話しされます」とのアナウンス。場内どよめく中、落ち着いた渋めの声でポゴレリッチ氏がアナウンスを始めました。場内もシンと静まり返ってその素敵なプレゼントを味わっているようでした。アナウンスが終わると拍手か沸き上がり、ほんわかと温まった空気の中、ポゴレリッチ氏が登場して演奏会が始まりました。

 

プログラムはバッハのイギリス組曲、ベートーヴェンピアノソナタ11番、ショパンの舟歌・前奏曲、ラヴェルの夜のガスパールでした。

どれも氏が心を込めて演奏する姿をオペラグラスで見つつ、深い内容の演奏に引き込まれていました。

 

中でも最も印象に残っているのが「夜のガスパール」です。この中には「オンディーヌ」「絞首台」「スカルポ」と3曲あるのですが、どれも絵画的でまるで映画のように目の前に画像が迫ってくるかのような演奏でした。

 

「オンディーヌ」では水の精オンディーヌが目の前に現れ、妖艶な招きの末に彼女の絶望、怒りが私の体にまとわりついてきました。

 

「絞首台」これが最も引き付けられました。荒れ果てた場所に置かれた絞首台で刑を受ける男。曲全体に絶望感が流れ、なんとか生をつなごうとする男のわずかな抗いもむなしく、吹き渡る風が無表情に彼の体を撫で、無言のうちに刑が執行されてゆく。会場全体が悲劇的な空気につつまれ、誰一人としてみじろぐことなくその景色を見守っているようでした。

 

素晴らしい演奏とはこういう演奏をいうのでしょう。風景を見せる演奏。それを実現させる技術と努力。感動しました。

 

そしてもう一つ、最後に感動したのはCD購入者にサイン会が行われたことです。私も長蛇の列に並んでサインをいただきましたが、この時期によく対応してくださったと思います。

 

ありがとうございました。