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ヨコハマ ワーグナー祭

今年初めのコンサートは1/18にみなとみらいホールで開かれた「ヨコハマワーグナー祭」でした。

ワーグナーのオペラを歌うコンサートではありません。

ここに出てくるワーグナーは「クリスチャン・ワーグナー」という人で、開港間もない19世紀の横浜に住んで、室内楽やオーケストラなどの音楽活動を通して日本に西洋の音楽を紹介した人です。1891年1月10日に根岸で没し、横浜外国人墓地で眠る彼を記念して、毎年この時期に開かれているコンサートです。

 

このコンサートにソプラノ歌手の友人、西由起子さんが出場するというので、彼女の声を聴きたくて足を運びました。

期待を裏切らない西さんの声は、柔らかさと艶と憂いを含んでうっとりと聞き惚れ、ひとつひとつの言葉を丁寧に語り掛けるような美しい歌声は、大きな感動で満たされるに充分なものでした。

須江太郎さんの伴奏も、軽やかに宙を舞いながら西さんの歌を飾り、お二人の演奏はこの日のプログラムの中でもひときわ輝いているように思えました。

 

もうひとつ気になる演奏がありました。

ヴァイオリンとピアノの二重奏です。曲目はモーツァルトの「ピアノとヴァイオリンのためのソナタ ホ短調」。ピアノの流れるような伴奏とヴァイオリンの熱のこもった演奏なのですが、なぜかこちらに何も伝わってこないのです。テクニックも申し分なく、間違えるところもなく卒なく弾きこなしています。でも感動しない。味のないビスケットを食べているような感じ。

プロの演奏を聴いていても、ごくたまにこういうことがあります。

何かを伝えようとしていない演奏、上手に弾くことだけが目的になっているのでしょうか、気持ちが乗っていないだけでこんなにも演奏が乾燥したものになってしまいます。

 

演奏する側にとって、日々の生活はすべて演奏につながるといわれます。毎日過ごしてゆく中で経験すること、感じること、思ったこと、それらすべてが自分の肥やしとなり、内面を豊かに成長させて最終的に演奏の色付けになる。そう考えると毎日何も考えずにひたすら突っ走っているたけではだめだなあと感じます。自分の中の感情に気づき、それを心に書き留めておくこと。丁寧に生きることで演奏の質も高めていけたらいいなと思います。